なりたいもの

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「わかったの。私がなりたいもの。だって康太のことが大切だから。いなくなると思ったら死にたくなるくらい寂しかった…」 笑顔で続けようとしたが、それはかなわず、涙が溢れてくる。絞り出すように言った。 「私、なりたいの。康太のお嫁さんに!」 次の瞬間、強く抱きしめられる。さっきよりもさらに強く。 「結婚してください」 「結婚してください」 二人、言うのがまったく同時だったから、クスクスと幸せな笑いがこみあげてきた。 「返事は?」 康太が耳元で囁く。吐息が熱くてドキドキする。照れ隠しに私も 「そっちこそ、返事は?」 とおどけてみせた。 そして、せーので「はい」と言う。見上げると、月も笑っていた。 さあ、これからだ。来月には康太はシンガポール。私の会社もシンガポールに支社がある。なんとか異動させてもらえないだろうか。善は急げだ。来週のミーティングのあとで部長をつかまえて話をしよう。 「これからの話しよか。上がってって」 「指輪? どこのにする?」 微妙に噛み合わない返しに笑って、康太の手を取る。私たちは手を繋いで歩き出した。 出会ってから15年。これから先の人生はずっと長い。 でもあなたとなら乗り越えていける。そう確信してる。
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