康太の憂鬱

2/3
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
大学1年、18歳のときに同じ大学の上級生だった本田に一目惚れ。『人生最大のドキドキ』を味わった彩佳は、それから足掛け7年にわたって5回の告白を試みるもすべて玉砕。 「最初にフラれた理由は『彩佳ちゃんはまだまだ子供だから』。あとの4回は向こうに彼女か好きな人がいてね。でも、最後の1回は、婚約者が出来てさえいなければイケたと思うの。明らかに、それまでとは違う手ごたえあったもん。だけど彼が翌月に結婚するっていう最悪のタイミングで…」 知ってるよ。そのくだり、100回は聞いている。本田にアタックしてはフラれ、ヤケになり手近な男と付き合うもすぐ別れ、凝りもせずまた本田に告白し…そのループの中に、ずっと彩佳に恋してきた俺は一度も組み込まれたことがない。まさにアウトオブ・眼中ってやつだ。 「最後に会った時、彼はこう言ったの。『彩佳ちゃん、俺たちもう会えないよ。次に会ったら自分を抑えられなくなるかもしれないから』。切ないでしょ。あー!なんであのとき、もう一押ししなかったんだろう! 彼から結婚するって報告受けて頭の中が真っ白になって…」 「そこが最後のチャンスだったってことだろ。いいかげん諦めな。大体相手は結婚しているっていうのに、不倫じゃないか」 「不倫でもなんでもいいの」 彩佳はまっすぐな目をして言った。 「だって、誰と付き合っても結局、本田さんのことを思い出してしまうの。忘れられないの。それって、彼に一度も受け入れてもらっていないからだと思う」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!