なりたいもの

3/5
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「待ってて。いまから行くから」 「…は? どこに」 「あんたの家!」 通話を切ると手近なコートをひっかけ、スマホと財布だけをポケットに突っ込んだ。 玄関で足が絡まり倒れそうになり、ドアに勢いよく手をつく。 「あ、鍵、鍵…」 鍵をかけるのももどかしく、マンションの外に飛び出すと、正面の暗がりから人影が目の前に迫ってきた。 「すみません」 俯いて横をすり抜けようとしたら腕を掴まれる。ギョッとして見上げると…康太だった。 「え…なんで、ここにいるの」 「慌てんなよ。なんでいつもそう落ち着きがないんだ彩佳は」 康太は覆いかぶさるように私を抱きしめた。温かい。すごくあったかくて… 「苦しい! ちょっと! 息できないよ」 「あ、ごめん」 「それと痛い。ポケットになんか硬いもの入れてる?」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!