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「待ってて。いまから行くから」
「…は? どこに」
「あんたの家!」
通話を切ると手近なコートをひっかけ、スマホと財布だけをポケットに突っ込んだ。
玄関で足が絡まり倒れそうになり、ドアに勢いよく手をつく。
「あ、鍵、鍵…」
鍵をかけるのももどかしく、マンションの外に飛び出すと、正面の暗がりから人影が目の前に迫ってきた。
「すみません」
俯いて横をすり抜けようとしたら腕を掴まれる。ギョッとして見上げると…康太だった。
「え…なんで、ここにいるの」
「慌てんなよ。なんでいつもそう落ち着きがないんだ彩佳は」
康太は覆いかぶさるように私を抱きしめた。温かい。すごくあったかくて…
「苦しい! ちょっと! 息できないよ」
「あ、ごめん」
「それと痛い。ポケットになんか硬いもの入れてる?」
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