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chapter 27.
「めっちゃ今、心臓飛び出そう…」
「俺も緊張してきたかも」
井上君がぽつりと呟いた一言に堤君が同意すると、それまで集まった大人達と談笑していた新井長官が振り向く。
「三人とも顔ガチガチだもんな」
緊張で顔を強張らせている衛君達を見て愉快そうに彼は笑った。
「それじゃ、そろそろ上映しますか」
小田桐さんがそう言うと、席から立ち上がった堤君が部屋の照明を暗くした。
プロジェクターから映し出された画面に、冴木が壁に描いたタイトルが映し出されると部屋にいる面々が歓声を上げる。
慣れない様子で少し照れくさそうに演技をする小田桐君と井上君を観てみんなが堪え切れず笑い出したり、別の場面では「ここのシーン良いね」と声を掛けたりしている。
確かに小田桐君が言った通り、まだ拙い荒削りな出来ではあるかもしれないが、それでも充分、彼らの映画に対する情熱と愛情が画面を通して伝わるような作品だった。
「なんか……ええな」
左隣に座る嶋田が、つい思わずといった調子で呟くので、私はこくりと頷いた。
そうして映画が終わるころ
小田桐さんは静かに、息を引き取った。
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