☆01. 灰かぶりシンデレラ。

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 頼りない息子よ。見かねて愛里沙が、航暉のランドセルからノートを探して、お母さん十二マスで合っているみたいだよ、と助け船を出してくれる。……こういうときにお姉ちゃんがいるとありがたい。  とはいえ。  急ぎジャンパーを着こむ自分に誰もついていく気配がないことに砂菜枝は嘆かわしくなった。子どもたちは、明日の準備どころか、航暉はさっさとテレビのほうへと行ってマイクラの続きを始めたし、お姉ちゃんの愛里沙は、タブレットでなにやら恋愛ゲームをしているよう。……呆れた。  この家の味方は誰もいないのか。玄関で、夫と鉢合わせた。うあっと、と喚く夫は、なんだこんな時間に、と言いたげに、 「どこ行くんだよ?」 「航暉の国語のノート買ってくる」 「……えおれの飯は?」  絶望的な気持ちになった。……母親が必死に、子どもの次の日のノートをこの九時に買いに行こうとしているのに、自分の飯の心配かよと。子どもじゃないんだから、ごはんの用意くらい自分で出来るでしょう!! 喚き散らしたくなるのを砂菜枝は必死でこらえた。 「……全部カウンターに置いてあるから。チンして食べて?」 「白いご飯も?」  人畜無害、わたしは関係ありません、って顔をしている夫の顔をひっぱたいてやりたい。「白いご飯は冷凍してあるから電子レンジで600Wで三分チンして?」いつも砂菜枝がしていることをこのひとは知らない。――子どもでも出来るようなことを。 「え? 風呂は湧かしてあるよね?」
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