☆01. 灰かぶりシンデレラ。

1/12
前へ
/64ページ
次へ

☆01. 灰かぶりシンデレラ。

「ちょっと航暉。水筒忘れてるよ!!」  砂菜枝が急いでエプロン姿のまま、あおコースで登校途中の航暉のところまで駆けつけて水筒を手渡すと息子は礼を言うどころか心底嫌な顔をした。「……ういー」  ありがとう、と言うところじゃないのかそこは。  かっ、と頭に血が上りはしたがスルーした。不機嫌な顔でかっさらうように水筒を奪う息子の姿に思うところがあったからだ。――息子はお友達と待ち合わせて登校途中。ひとつ上の姉とは一緒には登校しなくなった。……そして。  息子の不機嫌の理由を砂菜枝はエレベーター内で悟ることとなる。エレベーター内で改めて、何年かぶりにまともに自分の全身を見て砂菜枝は頭が禿げ上がるかと思った。  エレベーターの中には大きな鏡に映る女はくすんで。ノーメイクで、年相応にくまやくすみが目立ち、頭はひとつにまとめているがどう見ても疲れた主婦……。  シミの取れない白いふりふりのエプロンに(結婚祝いに義母から頂いたものだ)、毛玉だらけの、何年前に買ったかも忘れたセーター。スカートは中途半端なだけで、足元は白い靴下、これまたくすみが目立つ、更にはつっかけ。ミュールでもサンダルでもない、つっかけ。  
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

220人が本棚に入れています
本棚に追加