四十二歳のシンデレラ【完結】

☆01. 灰かぶりシンデレラ。

　それから敷きっぱなしだった家族全員の布団をあげ。毛布も掛け布団も畳んで置き、更には部屋全体に掃除機をかける。……玄関でこぼれ落ちたビー玉のごとく靴がわんさか散らかっているのを見て砂菜枝は心底うんざりした。家族が増えると靴が増える……出産前の自分はそんなことにも気づかなかったのだ。

　家族が増えるとコメの消費量が増える。食費もかさむ。学校お洋服雑貨と……出て行くお金の量が半端ない。だから、砂菜枝は、ここ十年は、まともに化粧すらしていない。スキンケアやお化粧に回すお金がないのだ。

　子どもたちの靴を靴箱にしまったり、汚れた靴をウタマロ石鹸とたわしを駆使して洗っているとあっという間に十二時を過ぎる。朝六時に起きてから、一瞬たりとも砂菜枝は座ってすらいないのだ。汚れた玄関を濡れた雑巾で磨くと雑巾が真っ黒になった。どれほどの菌を自分たちは持ち帰っているのだろう、と思うとうんざりした気持ちになった。