電話は丁寧に取りましょう。

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よいこのみんな、どうもこんにちは!! みんな大好き(自称)榊君だよ!! なんやらかんやらあって、実家の佐賀の田舎から東京の男子校に転校することになったんだ!! よろしくね!! 今は高校の門の前、お迎えを待っているところなんだ!! どんな高校生活になるのか、楽しみだなぁ!!わくわく!! 早速このテンションに疲れた。 やめよう。うん。 自己完結したところで、俺の前に広がっているのは、でかい門と奥に広がる森。 ここ東京だよね!? その高校は、校舎が森の中にあるらしい。 んで、校舎に車を使わないと、とても着けないらしい。 学校に行くだけでお迎え付きだぜ?笑うしかねぇ。 全寮制だから普段は困らないらしいんだけどね。 ただ、問題が1つあって。 お迎え来ない。 守衛室もございませんし。 かれこれ30分も待ってるのに来ない。 一人しりとりもエア縄跳びもワンセルフマジカルバナナもやり飽きてしまった。 このままでは一人じゃんけんしなきゃいけなくなってしまう。 それだけは避けたい。 学校に連絡するか。うん。そうしよう。 非通知設定だけど大丈夫だよね。 「かいちょー、でんわー」 庶務の片割れ、楽が言った。 「どこからだ?」 「んっと、非通知。」 「あー。切っていい。」 がちゃん なんか切れやがった。 番号間違えたかなんかかな? もっかいかけるか。 「かいちょー、またでんわー」 「どっからだ」 「非通知」 「切れ」 がちゃん 出ない。 プルルルr 「かいちょー、またでんわー。」 「どっk「非通知」切れ。」 がちゃん 「はァ!?」 プルルルルルルルr 「非tー」 「切れ。」 「らじゃ」 がちゃん 繋がらん プルルルrがちゃん は!? プルrがちゃん チッ… プrがちゃん 「なんやねん。」 まさか、嫌われてる?! 電話に!?もしかして呪い!? 誰かに相談しなければ。 霊能力を持ってそうな誰かに。 電話越しに除霊ってできるのかな。 プルルルr 『何。』 「転校するはずの学校にかけてもなんか電話切られるんだけど呪いかな」 『ざまあ。』 「あたしとの愛情、もう忘れちゃったの?」 『なんで愛人路線だよ』 「なんで繋がんないんだろ電話」 『んー、嫌われてんじゃね?世界に。』 「思ったよか大物に嫌われてたけど……やっぱか。」 『ま、それは冗談としてもだ。非通知だからじゃね?』 「非通知で切るか?普通」 『クソ忙しいか、クソ面倒くさかったらな。』 「成程。俺の迎えも来れないほど忙しいのか。」 『迎えに来るのめんどかったんじゃない?』 「扱い酷くね?」 『ま、非通知消してみたら?』 「んー。そうする。」 『おん。じゃーな。』 「サンキュー」 かちゃ 非通知設定消して… プルルルr 「何だオラァッ迷惑電話!!」 「えぇ……」 ちょっ馬鹿ですかっゴスッと携帯から小さく音が漏れる 「もしもしお電話代わりました椚原高校です。申し訳ございませんこちらの不手際でご迷惑をおかけしました。こちらでよく教育しておきますので御容赦ください。」 「あ、全然大丈夫です……」 「ところで要件は何でしょうか?」 「えっと…新規転校生の榊です。今門の前なんすけど、お迎えがきません」 「あ、マジですか。」 「マジです。」 「それはすみません。今迎えに行きますので少々お待ち下さい。」 「あ、了解です。」 「では。」 「はい。」 がちゃん まじ通じてよかった。電話。 誰だったのだろうか結局。くそ丁寧な感じの方だったが。 まあ、待つか。 「遊、遊はいますか?」 庶務の片割れを呼ぶ。 生徒会副会長、千歳(ちとせ) 悠莉(ゆうり)は焦っていた。 今回の転校生、(さかき) 魁斗(かいと)は理事長の甥だと聞いていたが、まさか迎えが行っていないとは。 ただでさえバ会長が派手に暴言を吐いたというのに、これ以上イメージを悪くしたらさすがにまずい。 この案件は庶務の管轄なのに、奴らは何をしているんだ。 「いまは…ゆ、も、らく…も、じゅ、ぎょ…いった」 「なんてことだ」 彼奴らいつもはサボってるのになんでこういう時だけ授業行ってんだ。 てかさっきまで電話取ってたよな!? …しょうがない。 「ちょっと空けますね。千遥、留守番お願いします。」 僕が行くしかないじゃないか。 「行って…ら、しゃい」 書記の凪の声に見送られて生徒会室を出た。 「来ない。」 遅い。 しょうがない。しりとりー、りーんごー、 「すみません。榊君ですか?」 「あ、はい」 びびったぁ 後ろから来るとは。 振り返って、もっとビビる。 何だこの美人。ほんとに男か? サラサラしたボブの亜麻髪にバランスの良い顔立ち。 きれいな人だ。モデル顔負けな感じ。 しかも美声。一生ついていきますって言っちゃいそう。 「私、生徒会副会長で2年の千歳(ちとせ) 悠莉(ゆうり)といいます。お迎えに来ました。遅れて申し訳ございません。」 あ、あの電話の人か。 「ありがとうございます。はじめまして。千歳さんめっちゃ綺麗ですねー。妬みます。モテそう。羨ましい。」 「いえいえ。この学園でモテてもどうしようもないですし。」 心做しか千歳さんの目が死んだ気がする。 そういやここ男子校だったな……。 とりあえず合掌。 「なんですか」 「いやなんか目死んでるなと思って」 「うるっせぇな」 「キャラぶれてるキャラぶれてる」 千歳さんがハハっと笑う。 「いっそのことキャラ変えてみますか?ヤンキーとか。」 「あなたには無理です諦めて下さい」 「なんてことだ。さて。戯れるのは程々に行きましょうか。」 「はーい。」 千歳さんのカードキーで門が開く。 ま、じか……と俺はここ最近で一番ショックを受ける。 その門スライド式だったんだ。
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