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「ねぇひき肉ぅぅ聞いてよぉー」
「チュンッ」
「なんかさぁ、ヤクルト部ってとこに入ったんだけどぉー、顧問が担任でしかも顧問としてはヤバいタイプの担任でさぁー…俺生きていけるかなぁ。」
「チャッチャッチュンッチュンッ」
「そう?やっぱそう思うよな……でもさー、ヤクルトを毎日部費で飲めるってのは健康上大きなアドバンテージだと思うわけよ。善玉菌を愛する高校生としては。」
「チュンッチュチュ、チャッ」
「正直そんな部活に部費降りてるのかは別としてもー。まあいくらなんでも生徒に自費では出させないでしょ。」
「ケキョッ!」
「やっぱお前はわかってるわひき肉……今度ブロッコリー買ってくるな。1000円の水売ってる高級スーパーで。」
「チュンッ!!」
「えー、脂身がいいー?俺ぽちゃついたお前とか見たくないんだけどーそこそこ動ける体でいてほしいんだけどー?」
グリグリグリィと水月(急所)(痛い)に鼻を押し付けてきやがるひき肉。
痛い。もしかして狙ってますか?
じとぉっとした湿度98%くらいの視線を感じたので振り返ってみると、チベットスナギツネみたいな目をした進藤さんと目が合った。
まああいつは乾燥帯の生物なんだけど。
「榊………そろそろ犬相手にしゃべるのはやめろ。怖い。」
「えぇぇえだって話してる感だけでもほしいっていうかもはやもうひき肉がどんなリアクションしてても気にしてないっていうか…………ひき肉が可愛いんだもんー!!」
バタバタとソファーの上で足をばたつかせると、腹の上に乗っていたひき肉がぐらつきながら動くな、とばかりにチュンっと鳴いた。ああ、可愛い。
「そんなお前は気持ち悪い。」
「僕はもう、周りの視線を気にしないで生きることにしたんだっ……!!!」
「お前それどこのギャルゲの引っ込み思案ボクっ娘美少女が言ってたんだよ。」
「『戦乱の世の胡蝶たち〜戦刃の乙女~現代Ver.』の出雲川藍ちゃん。ショートカット眼鏡パーカーイメカラ空色系女子でチョロインの鏡。素敵。」
「現代Ver.って、それはもう戦乱の世ではないのでは?」
「それは言わない約束よ。ねー?」
そう俺の喉を舐め回すひき肉に同意を求めると、チュンッといいお返事が返ってきた。
「お前わかってんな。やっぱ俺の心の友だよ。お前は。」
「人間としてせめて心の友は人間にしようや。」
「知らないのか?人類の最愛かつ最高の友は、いつだって犬だったんだぜ?」
「そうやってドヤ顔してるお前さん、はたして人間の友はいるのか……?」
「んー?進藤が目の前にいるじゃん。」
「っ…………」
おい赤面して無言でキッチン引っ込むなよなんかこっちが恥ずかしいだろ!!小学生かよ!!
もっと喋ろうや!!へい、かもん!!
そう言ったら、
「お前今すぐ黙るか、夕食はハンバーグをやめてブロッコリー丸ごと茹でてマヨネーズかけただけのやつにするか、どっちか選べ。」
「はい黙りまぁす!!!!!!」
ハンバーグ最高。
お前の主様可愛いな、と小声でひき肉に話しかけたら、フスッと鼻を鳴らされ、グリグリと肘に頭を擦り付けられた。いや、お前も十分可愛いからね。
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