4. 透明なレンズの中で

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 前言撤回。翔に内緒で後から削除しようと思っていたが、この写真はずっと残しておこうと思う。もしこの先の人生で何か悲しかったり辛かったりして落ち込むことがあっても、この写真を見たら自然と笑顔になって元気が出てきそうだ。 「もう一回やってみます?」 「いや、もういい」 「え~? 拗ねないで下さいよ~」 「別に拗ねてない」  美果は楽しいが、初の一眼レフカメラでの撮影が説明不足のせいで大失敗では、いくらなんでも翔が可哀想だ。せっかくカメラと写真の世界に興味を持ってくれたのに、いきなり苦手意識を持ってしまうかもしれない。  そう感じた美果は挽回の機会を、とリトライの提案をしたが、翔はもうカメラを手にしようとしなかった。  とはいえ、彼は特に怒っているわけではなかった。先ほど梨果の話をしたときに比べれば怒りの感情はほとんど感じられず、どちらかというと拗ねてしまったような印象を受ける。こうしていると『ちょっと可愛い』と失礼なことを考えてしまった。 「翔さん、意外と苦手なこと多いですよね」  ふふふ、と小さく笑いながらカメラの電源を落としてレンズを外し、ひとつひとつバッグへ戻していく。翔も興味を失ったようなので、本日のところはこれで終了だ。 「カメラの使い方なんて完璧に出来る奴の方が珍しいだろ」  ぶつぶつと文句を言う翔に苦笑しつつ、カメラをすべて戻し終える。
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