4. 透明なレンズの中で

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 とにかく美果の希望は聞き届けてもらえたし、帰宅した翔もお腹が空いているだろうから、早く片付けて翔の夕食を用意しよう。いつものように夕食は作ってあるのであとは温めるだけだが、今日は食べる直前まで準備を終えてから帰宅しようと思う。 「じゃあ、物置に片付けてきますね」  その前にカメラを物置部屋に置いてこよう。  そう思ってバッグを抱えながら立ち上がろうとした美果だったが、足に力を込めようとした瞬間、下半身に思いもよらない痺れが走った。  翔にお願いをする誠意のつもりで長時間慣れない正座をしていたせいか、それとも先ほど翔のことを笑ってしまった代償か。  ジンと痺れが走った直後、足から突然、力が抜けた。 「っ……!?」 「ちょ、おいっ……!」  当たり前のように立ち上がれるとばかり思っていたのに、うっかり立ち上がり損ねた。その油断も相まって美果は前のめりに崩れ落ちると覚悟したが、腕をついたのは床ではなく翔の胸の中だった。 「いっ、て……!」 「ご、ごご、ごめんなさい……!」  転びそうになる美果を抱き留めた衝撃を感じたらしく、翔が少し苦しそうな声を上げた。  それに気付いて急いで謝罪をしたが、足に力が入らないせいで上手く離れられない。変に動くと足がジンと痺れて痛みに変わるので、悶絶して前にも後ろにも動けないのだ。  それでも腕の力を使って身を起こそうと藻掻くと、翔に肩を支えられて身体を起こされた。 「大丈夫か?」 「だっ、大丈夫ですぅ……」
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