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ぶるり、冷気を感じて体が震えて、わたしは目を覚ました。少しでも温めようと無意識、両手で肩を抱いて反射的に身を起こす。正面の壁掛け時計が目について、零時を回って二十五日、クリスマス当日になっていることがわかる。
どうして急に寒くなったかというと、いつの間にかわたしの傍らに岬がいて、彼の氷のように冷たい体温が伝わってしまったみたいだった。
「……なに、しに、来たの?」
どうしてか、無性に嫌な予感がして、わたしは訊ねた。寒さだけではなく、心の動揺で、声が震えていた。
「ついさっき、ヴァンパイアハンターとやりあってな。割合、手ごわい相手だったもんで、魔力を浪費した。おまえの極上の血を貰いに来た」
ああ、ハンターさんもこのクリスマスの夜にお勤め、ご苦労様です。岬は自分の命を狙う相手には容赦しないから、もしかして今頃、この世から旅立っているかもしれない。聖なる夜に……。
「……いい加減にしてよ……っ」
せっかく会えたのに、特別な夜に来てくれたのに。嬉しいって思えなかった。
「わたしの血だけが目当てだとしても、割り切ってたつもりだけど……もう嫌! 無理! 限界なのよ!」
何年も見ない振りをしてきた。わたし自身を好きになってくれなくても、岬にはわたしの血が必要なんだから、きっとずっと側にいてくれる。ずっとずっと片想いでも、この際、「いつまでもわたしだけを特別に見てくれる誰かがいてくれる」って事実だけでも、わたしの孤独を癒して貰える。そう思ってれば耐えられるって思い込もうとしてた。
「本当にわかってないの? わたしはあんたが好きなのよ! 血だけじゃなくて、わたし自身をもっと見てよ!」
報われない恋心を抱えたまま好きな男の側にずっといるなんて、堪えられるはずがなかったんだ。求められたら拒まず血だけを与えて、貧血になっても文句も言わず。そんな都合が良いだけの女で居続けることに、心が傷まないわけないじゃない!
長年の蓄積を、怨念を込めて私がヒステリックに叫んでも、岬はいつもと変わらぬポーカーフェイスでわたしをまっすぐ見つめていた。
ああ、今はその取り澄ました綺麗な顔が、憎たらしくて仕方ない……心臓が煮えたぎるような怒りに襲われた、その刹那。
「……えっ?」
存外、優しげな手つきで岬はわたしの肩に触れて。ゆっくり畳の上に押し倒す。仕事用のシャツの生地は薄目で、手の冷たさを直に感じてしまう。
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