十五歳の憂鬱

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 無限に湧く魔力なんてものがあるんだから、血をたかりに来る吸血鬼の糧にするためだけじゃなく、わたしだって自分のために使いもする。  十五歳になってすぐ、わたしはその魔力と魔術でもって、自分の体の時を止めた。なんでそんなことをって? そりゃあ、そんなものが使えるってなったら、誰もが真っ先に試すんじゃない? 不老不死。残念ながら現在の魔術じゃあ不死、は無理らしくて、だからとりあえず不老の方だけ実現しておいたってわけ。  就労が出来る年齢で、自分が最も若く美しい時。なんて理由で後先考えず「十五歳」って年齢を選んだこと、さすがにわたしも性急だったかなって後から気が付いた。十五歳の女の子が安定して勤められる就労先なんて、そんなにバリエーションがなかったから。  今のところ、十五歳で良かったかもって思えるのなんて。見た目十三歳の岬と並んで歩くには全く違和感がないってことくらいかな。身長、目線の高さ、ほぼほぼ同じ。  ここで登場、わたしの勤め先のメリットその二。シフト勤務でパート、アルバイトの年代は学生から定年退職間近のご婦人まで様々で、それも毎日行く度に同じメンバーで働くわけじゃないから、人間関係が薄い。お客さんの目の前でべらべらと私語をするわけにもいかないから、自分の身の上話をしなきゃいけない場面も限られる。  店舗ひとつひとつはミニスーパーでも、母体は全国展開している大規模チェーン店だから、「引っ越したいから」っていう理由でなら簡単に希望地域へ異動もさせてもらえる。  要するに、世を忍ぶわたしのような異端にとっては都合が良い環境ってわけ。 「そういやぁ、おまえのその、みかんみてぇな色した頭。そんなんでああいうタイプの客商売に雇って貰えるもんか? もっとチャラついたとこならともかく」 「これも、わたしの魔術でちゃちゃっとごまかしてんの。お店で顔を合わせるあらゆる人達からね」 「魔力の色か」 「こっちは単なる趣味。魔力の色はこっち。あんたと同じ、緑色」  山吹色の髪はなんとなく好きで脱色してるだけで、わたしの魔力の色は瞳に表れてる。一生ものの片想いとはいえ、好きな男の魔力の色とお揃いっていうのは、密かに幸せ感じちゃってたりする。こーんなささやかな幸せポイントって、わたしってばあんまり可哀想じゃないの? 「必要不可欠ってんでもねぇとこに、わざわざ目くらましの魔術ねぇ。無限に湧く魔力持ちってなぁ贅沢出来て結構なこった」 「その魔力を全力で当てにしておいてよく言えるよね……岬ってさ、どこまで知ってんの? 前世のわたしのこと」 「世間一般の魔物(オレら)が知ってる基礎知識程度」
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