一章

1/61
703人が本棚に入れています
本棚に追加
/250ページ

一章

トリニティ・フローレスはフローレス侯爵家の一人娘だった。 薄桃色の髪にミスティグレーの瞳。 小動物のような大きな瞳、白い肌、笑顔が天使のように可愛らしい少女であった。 トリニティは両親に溺愛されて、それはもう大切に大切に育てられて礼儀を弁える立派な令嬢に成長していた……はずだった。 ーーーしかし、とある王子との出会いを機に全てが変わる。 この国の第二王子であるダリル・テ・エルナンデスに出会った瞬間、トリニティはダリルに執着した。 表向きは以前と変わらず天使のように振る舞うが、裏では悪魔に取り憑かれたように豹変するのである。 可愛らしさとあざとさを武器にして、周りを巻き込みながらヒロインを孤立させて貶めていく。 ネチネチと嫌らしく追い詰めていく『悪役令嬢』それがトリニティだ。 「ダリル殿下は、絶対に渡さないんだから……!」 ダリルはこの国の王族特有のゴールドの髪にサファイアブルーの瞳。 これまた王道で上品で甘いトロトロな王子様フェイス。 俺様系の攻略対象者ではあるが、心の何処かで寂しさや虚しさ、兄に対しての劣等感を感じているのを隠している。 そんなダリルルートの攻略を面白く盛り立てていくのが、ダリルを異常なほどに愛してやまない婚約者のトリニティ・フローレスなのである。 ダリルへの執着は常軌を逸していた。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!