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壱
白雪が絹とあの檻のある部屋に行った数刻の間、翠とララは別室で待機をしていた。
「失礼いたします」
託し物を終えたのか、扉が開かれ絹だけが中に入ってきた。
「白雪は?」
「少し眠っておられます」
今、かなりの体力を消耗していると絹は二人に説明する。
「·····火ノは白雪に何を渡した?」
文の内容には詳細ははっきりと書かれていなかった。
絹は素直にその質問に答える。
火ノ神の神力の一部の炎を白雪の体内に【吸収】させた事を···
「吸収?」
【讓渡】ではなくて?
「讓渡は白雪様と水神様で行う事が出来る伴侶との契りです」
吸収は愛姫が伴侶関係なく相手の神力を奪いとる事が出来る。
しかし、吸収をする為には条件があると言う。
絹は吸収の条件について教えてはくれなかった。
「····あのバカ···」
呆れた様な声で言うララは座っていた椅子から立ち上がり、白雪の眠る部屋へと向かった。
白雪は雪神だ。
雪神の体内に炎の神力を入れ込むなんて相性を考えればわかる事だ。
かなりの負担が身体にかかっているはず。
しかし、それを分かって火ノ神は彼女に己の神力を託した。
火ノ神は彼女の吸収の事を知っていたと言う事だ。
いや、知っていたと言うよりも初代愛姫の話を聞き、もしかすると白雪にも吸収が可能なのではないかと賭けたのだろう。
全ては白雪に闇神を討ってもらう為に·····
「················」
あの二人は何処まで予測していたのだろうか。
どちらが先に計画をしていたのだろうか。
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