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こうして本音を隠しながらも、好きな子にせっせと年賀状を書いている。
日本人が年賀状の意欲を失っていく中、こんなに一生懸命に年賀状を書いている中学生はおそらく僕だけだろう。
冬休みで更にだらしなくなった体を起こして、机に向かう。
さて、残った余白に何を書こう。
いつもなら恥ずかしがって、くだらないメッセージしか書けないが、来年は僕も立派な高校生になる。つまり少し大人になるわけだ。
せっかくなら、大人っぽく、この余白に彼女との距離を埋めることが書きたい。
僕には、ずっと書きたかったことがある。
彼女の気持ちが分からず、書けなかった1つの願望。
普段なら勇気がなくて言えない願望も、年賀状なら優しく受け止めてもらえるだろうか。
絵心がない兎も「きっとそうだ!」と頷いてくれているような気がして、僕は年賀状の力を信じてみることにした。
震える手でペンを持ち、深呼吸をしてから一気に筆を走らせ、書きたかった一文を書いた。
「今年の夏休みは、橋本に会いにアメリカへ行くよ」
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