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「如月朔夜」と言う名前に如月が反応する。
「確か書記の親、だったよな。青紙事件の加害者扱いされて、検察側に散々罵られた後、冤罪で解放。検察は謝罪もないから密輸して大量テロの計画してたって。聞いたよ」
洗いざらい吐く彼に、笑いかける。
「諦めてんのか。俺も分かるよ、その気持ち」
全てが終わると分かるから、せめて人の役に立ちたい。
「お前、こんなことはしたくなかったろ。本当の犯罪者はなんも吐かない」
その言葉が核心を突いたのか、再び笑う。
「ご名答。誘われたんだ」
その瞬間、如月が立ち上がりこっちに向かってくる。
「ダンッ」
俺たちの机を叩く。
「人に誘われたから?本当の犯罪者では無いならなら誘われた時点で止めることだって出来たはずだ!」
そうだった。
如月は父親が冤罪をかけられた青紙事件に対し深い憎しみを持ち、関わることを心から拒否していたのだ。
「……すまない」
「謝って済むなら元々俺らはいないんだよ!分かるか!」
青紙事件で父親が変わり、母親は既に病死。
一人夜の街で変わり果てていた所を長官が目をつけた。
それから2年の間、長官が義務教育を再び行った。
そしてスパイ課に入り俺が教育している。
彼がどれだけ変わり果てたか。
気持ちがなんとなく分かるのが嫌だ。
「如月。落ち着け」
「……!」
自分の記憶をまた閉ざし、口を挟む。
「……」
如月は落ち着きを取り戻して行った。
「…すいません」
「今は私情を仕舞っておけ」
如月は椅子に戻り、再びシャープペンを握る。
だが、シャープペンを握る力が強くなっているのは分かる。
「ボスはどこにいる」
「一人で外国に逃げるつもりだろう。息子を置いてな」
「嫌味はみっともないぞ」
こんな空気感はいつぶりだろうか。
冷たい、しかし少し生ぬるい。
嫌な予感がする。
「すまないな」
そう彼が言った時。
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