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第二十二話
霊柩車から盛大なホーンの音が鳴った。それに合わせて裏門が開く。
前もって戻ったことを知らせる合図を決めておいた。霊柩車らしく棺を運ぶ際に鳴らす音を合図にしておいたのだ。
武士を轢きながら門をくぐるとすぐに見張りの僧侶達が門を閉めてくれた。
「お疲れ様です僧庵様」
若い僧の日文が僧庵をねぎらった。
「あぁ、何とか生きて帰ってこれた」
僧庵はそう言って返す。全員が車から下りると日文が、あれ? と口にし。
「石川様は?」
「……石川さんは僕たちを守ろうとして――」
伏し目がちに鈴木が答えると日文も察したのか手を合わせるにとどめていた。
「パパ~!」
「あぁ。戻ったよ信美」
本院に戻ると長信の娘が帰還に気が付き駆け寄ってきた。長信がその頭を撫でる。
「信美殿。いいものを持ってきたでござるよ」
すると服部が信美にチョコバーを差し出した。信美の顔がぱぁっと明るくなる。
「これを貰っていいの?」
「勿論でござるよ」
「ありがとうお姉ちゃん!」
信美が服部にお礼を伝えチョコバーを受け取った。大豆アレルギーの信美は摂れる食事に制限があった。
そんな信美にとって甘いチョコは天からの恵みにも思えたことだろう。
「あっま~い!」
嬉しそうにチョコを頬張る信美の姿に樋村と衣弓の顔も綻んだ。
石川の死で落ち込んだ気持ちも多少は晴れたようだ。勿論石川の死を悔やむ気持ちも残っているが、むしろ我が身を犠牲にして皆を助けようとしたのだからその気持ちを無駄にしない為にも立ち直らないといけないだろう。
「折角だから今晩ぐらいは収穫してきた食べ物で贅沢するでござるよ」
「……そうだな」
「――なら食事の準備が出来たら呼んでくれ」
そう言って梶原が背を向けてその場を離れようとした。
「手伝う気もないでござるか」
「……おい。顔色悪いぞ。気分でも悪いのか?」
「ちょっと疲れただけだ」
不満そうに服部が口にするも医者の平賀は別な印象を持ったようだ。
樋村もそういえば顔色が悪いかもしれないと感じてはいたが、しかし梶原は素っ気ない返事だけのこしてどこかへ行ってしまった。
「おお、戻ってきたんだな。疲れてるよな? お風呂の準備出来てるから入ってきなよ」
「私達が気を遣ってあげたんだから感謝してよね」
今度は竜馬と小夜子が姿を見せて彼らを風呂に促した。
確かに武士とのこともあり大分汚れている。
「ありがとう」
「ありがとうございます小夜子さん!」
「えぇ。女の子なんだからちゃんと綺麗にしないとね。樋村もちょっと臭いわよ。しっかり洗いなさいよ」
小夜子は衣弓に対しては随分と優しいが、樋村に対しては厳しかった。
樋村も思わず苦笑いしてしまうがこういう性格なんだろうと諦めつつ、準備してくれたことに感謝し風呂に向かうのだった――
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