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第二十話
「チッ、こっちに武士共が来やがった!」
「皆、食料確保出来ましたか! そろそろ戻ってきてください!」
出入り口にわらわらと武士が集まってきていた。石川が出入り口を押さえ入れないようにしているが数が多すぎる。
いずれ限界がくることだろう。鈴木は奥で食料などを確保している皆に呼びかけていた。
僧庵の運転するバスが戻ってきたらすぐにでも乗り込んだ方がいいだろう。
「クソ! これは持たん! ドアを開けるぞ。すぐにその銃で撃ってくれ!」
「わかった!」
鈴木に呼びかけそして石川が手を外し距離を取った。武士が扉を開け一気になだれ込んでくる。
「大道芸人舐めるなよ!」
すると石川が口に瓶の中身を含み武士に向けて火を吹いた。火炎放射のごとく勢いであり武士の動きも鈍くなる。
そこへ鈴木が火縄銃で追撃した。だが火縄銃は次を撃つまでに時間が掛かる。
鈴木は銃の扱いに長けており器用な方でもあったがそれでも次を撃つまでに十五秒程を有した。
「おらぁ!」
鈴木の負担を減らすために石川が持ってきていた薙刀を振り回した。
これにより多少なりとも余裕が生まれたがそれでも武士の数に対して戦力が足りていなかった。
「戻ったでござる!」
そこへ服部達が合流した。更に遅れて医者の平賀もやってくる。
「加勢するでござるよ」
服部が手裏剣で武士の足止めを試みた。しかし数が多い。
「ぐぉ!」
前衛に立っていた石川が苦悶の表情を浮かべた。脇腹に武士の刀が突き刺さっていた。
「石川さん!」
「ちっ、ミスったぜ――」
口から血を流しながら石川が呟く。その状態でもそのパワーは凄まじく刀が突き刺さったままで武士を振り回し投げ飛ばした。
すると出入り口の向こう側にバスが突っ込み武士を弾き飛ばしながら動きを止めた。
「おまたせしました皆乗ってください!」
樋村が窓を開け叫んだ。衣弓が開いた窓から矢を射って援護してくれている。
「へへ、だったら最期ぐらい派手に決めるぜ!」
石川が叫び大筒を構えた。
「道線を開く! お前たちは逃げろ!」
叫び石川が大筒を撃った。爆轟し大量の武士が吹っ飛ばされた。
石川が言った通りバスまでの道が開く。
「や、やったぜ早く行こうぜ!」
「後ろからも来てるでござるよ!」
梶原が焦っており服部も緊張感のある声を発していた。バックヤード側にいた武士たちも迫ってきている急いで脱出する必要があるだろう。
「石川さん何を!」
「いいからお前たちはさっさといけ。ここは、俺が食い止める! うぉぉおおぉおお!」
鈴木の声を背中に受けながら石川が逆側に向け駆け出す。そして後ろから迫ってきた武士を体を張って止めた。武士の刀が全身に突き刺さっても彼は必死に食い止めた。
「石川さん……」
「鈴木殿。気持ちはわかるでござるが、五門殿の気持ち、無駄にしないためにも急ぐでござる!」
服部に言われ鈴木が拳をギュッと握りしめる。そして頭を一つ下げたあと皆と一緒に霊柩車に乗り込んだ――
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