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内心そう思いながら、普段とは違う装いに身を包んでこちらへと近付いてくる姿を傍目に、それで、と私は言葉を続ける。
「二階堂家の御子息様がこんな所で油を売ってていいわけ?」
出てけ、と。
そんな意味を込めて口にするのだけれど、そんな気はさらさらないようで。
すとん、と。
私の横に置いてあるふかふかのソファーに腰を下ろす鷹司家に並ぶ名家の一つの二階堂家の一人息子のこの男。
狭い世界だから、昔から家族ぐるみで付き合うことも多くて。
お陰様で匠との関係はもはや腐れ縁というやつ、だ。
「挨拶回りだるいんだもん。少しくらいここで休憩さしてよ、玲ちゃん。」
その亜麻色の髪をかきあげながら疲れたとばかりに重い溜め息を吐いているけれど、正直なところわざとらしいんだよね。
だから、は、と鼻で笑って白けた視線を向けていれば、置いている私のグラスに向かって手が伸びてきた。
「あのさ、毎回言うけどさ。玲ちゃん、俺年上なのよ?もうちょっと敬ってくれてもよくない?」
「人の妹を口説くロリコンのどこを敬えと?」
「うーわ、耳が痛い。」
そんな軽口を叩きながら、人のシャンパンを飲み始める始末。
飲みたいなら自分で持ってこいっての。
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