2 御屋敷

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2 御屋敷

 民宿ふるさとから芯弥の家に行くまでの道中は実に興味深いものだった。辺鄙な田舎の風景に間違いはないのだが、点在する建物の一つ一つに興味をそそられ、思わずにカメラを回してしまうほどである。  始めに見つけた神社であるが、周りが田んぼに囲まれていた。四方が田んぼで、その中央に神社が建っているのである。四方を玉垣で隔たれ、その内側は小さな山のように盛り上がっていた。神社と外界を繋ぐのは石造りの鳥居のみ。鳥居の向こうには僅かな石段が見え、その頂上の御社の姿は見えない。ぼくは氏神様への挨拶を考えたのだが、今は人を待たせている故に後回しにすることにした。  更に進んだ先には一つのトンネルが見えた。名前を刻んだ看板もなければ、定礎もない、照明すらも無い。まだ三時頃だと言うのにトンネルの袂しか見ることが出来なかった。出口を照らす僅かな光すらも見えないのである。見ただけで寒気を覚えて鳥肌が立つ…… ぼくの全身が「あのトンネルには行くな」と訴えかけているように感じられた。正直なところ、雰囲気だけならば、ぼくが心霊スポットとして訪れたトンネルに負けず劣らずだ。行くとするならば20000ルーメンのライト持ちかつ、取材クルー全員での同行になるだろう。そうさせたいと思うぐらいに危険な場所だとぼくは考えたのだった。  やがて、ぼくは木造平屋建ての小学校の前を通りかかった。その門の前には石造りの二宮金次郎像があり、思わずに足を止めてしまった。その二宮金次郎像は年季こそ入っているが、新品の十円玉のように赤銅色の光に輝く青銅(ブロンズ)製の立派なものだった。普段から手入れがされているのだろう。 「未だにあるんだ」 ぼくは二宮金次郎をスマートフォンのカメラに収めた。本当はビデオカメラを回してのレポートを行いたかったのだが、人を待たせていることもあり写真撮影だけに留めておいた。 その時に校門前の看板も確認を行った。 「えっと…… 涼風村分校…… 廃校なのか、そうでないのかはわからないな」 校庭の隅に置かれた遊具はブランコと雲梯と鉄棒のみ。中央にはサッカーゴールとバスケットゴールが二つのみ。体育館は無い。この昭和レトロポップを極めた学校はとても魅力がある。 「ディレクターのいい土産になりそうだ」  学校を後にして数分歩いた先に、大きな屋敷が見えてきた。昭和、いや、大正…… 明治より以前からあるように感じられるそれは武家屋敷と呼ぶに相応しかった。先程、芯弥から聞いた住所はここに間違いない。 インターフォンはない。どうやら、玄関に入る必要があるようだ。ぼくは立派な門構えを抜け、飛び石を踏み抜き、これまた立派な玄関の引き戸を開けるのであった。玄関前にて、ぼくを出迎えたのは羚羊(かもしか)の剥製だった。上がり(かまち)からそのまま続く広めの床の間に置かれた羚羊の剥製に思わず目が奪われてしまう。
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