4 山狩り

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「骨を剥製の芯にしたと言うことか。いい加減にして欲しいよ」 ぼくは以前、人間の子供の骨を材料にした人形を見たことがある。まさか同じようなものを再び見ることになるとは…… 驚くよりも、悲しい気分だ…… 同じことを考えた人間がこの世に二人もいたことに対してである。 本来なら、埋めて眠りに就かせてやりたいものだが、今はぼくも身が危うい非常事態。隅に寄せるだけで許して欲しい。そう思いながら頭を持ち上げると、感触に違和感を覚えた。 始めにこの小学校前を通りかかった時にも思ったのだが、この二宮金次郎像は「銅像」であると赤銅色に光る見た目から判断していた。だが、今こうして手を触れてみると、その感触は銅ではない。まるで、陶磁器のような冷たさと軽さなのだ。感触としては釉薬(ゆうやく)で薬がけされたツヤのある植木鉢の表面と同じである。 「陶器人形(ポーセリンドール)の中に人間の骨が入っているのか……」 地下壕の人間剥製の芯にはマネキンが使われていた。これとは別の系譜になるのだろうか…… 陶器人形(ポーセリンドール)の中には子供の骨が入っていた。 陶器の二宮金次郎像の中身は当時の二宮金次郎の同世代と思われる子供の骨が入っていたのだ…… 「ごめん…… ごめんなぁ……」 ぼくは中の白骨となった子供に謝りながら、一つ一つ破片を両手で丁寧に持ち、校庭の隅の木の袂に並べて、置いた。そして、手を合わせ、その子の冥福を祈った。 ぼくにしてやれるのはそれだけだ。 車に乗ったぼくは村内を流していた。先程、村内放送があった割には村人の姿は皆無…… 先程のアパレル店の女性店員の姿を見る限りでは人間かどうかすらも分からない。知らないうちに車の回りを包囲されている可能性も考えなくてはいけない。 そうなれば、いよいよ一線を超える覚悟も必要だ。相手が人間でないならば、一線を超えたことになるのだろうか? そう考えているうちに丁字路が見えてきた、左に行けばトンネルやトンネルの方面、右に行けば村の入口、商店街や村役場の方面だ。丁字路だけに、どちらかに曲がらなければならない。村の入口は塞がっていることは確認済だ。ここは左に行き、またトンネルを潜った方がまだ前に行ける可能性が高い。ぼくはハンドルを握る右手から薬指を伸ばし、左にウィンカーを出そうとした。
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