おわりに

11/15
前へ
/116ページ
次へ
「仲根芯弥には涼風芯太ちゃんの殺害容疑がかかっていたんだ。いくつもの目撃証言、雑貨屋であいつが縄を購入した証言、吉川線に残っていた皮膚のDNAからな。とうに潰れた村で起こった事件の資料に目を通してやっと気がついたことだったんだよ」 「そこまで分かっていて何故に逮捕に踏み切らなかったんですか?」 「行方知れずだったからだよ。まさか、こんな遠い東京にいるとは思わなかったがな。全く…… とんでもない男だよ。自分の息子を殺して東京に逃げるんだからな! しかし、やっこさん見つけてみれば墓の下と来てやがる」 ぼくは刑事が何を言っているのかがわからなかった。自分の息子……? 一体どう言うことなのだろうか。刑事は続けた。 「親子関係だってのは皮膚のDNAで分かったんだよ。幼いながらに最後の抵抗を行ったのだろう、吉川線に残っていた皮膚のDNAと仲根芯弥のDNAが一致したと資料に書いてあったんだ。しかし、芯太ちゃんの年齢から計算するに、芯弥が十五歳ぐらいの時の子供になる。あの村は限界集落だ、娯楽がなくて同級生とこういうことをしたのか、村の後家に筆おろしをされたのかは知らんが、あり得ない話ではない」 「はぁ……」 「現に芯弥は『稼業』を継ぎたくなくて、村を出たと資料にある。その親戚も亡くなっていて真実はわからなかったがな」 ここまでの話も「ない」筈の涼風村で「亡くなった」筈の芯弥から聞いた話と合致する。 ぼくは困惑しながらも刑事から話を引き出すことにした。 「あの? 『稼業』の方はご存知で?」 「知らんな。資料には『稼業』としか書いていないし、前の担当者もとうにやめている。追跡調査をしようにも、肝心の村が荒れ地の枯芒(かれすすき)と化している以上は調べようがないではないか」 どうやら、芯弥の家の稼業が剥製師と言うことは知らないようだ。当然、人間剥製の裏稼業も知らないということになる。もし知っていれば、芯弥の墓を尋ねるどころの騒ぎではない。それこそ、警察が主導しての荒れ地の開墾が行われる程の大騒動にあるはずだ。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加