プロローグ

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プロローグ

 PCの画面にクリエイターツールを出して、ライブ配信が可能な状態にする。  俺は自分の部屋の窓をしめ、ゆっくり扉を開け部屋の外を確認した。  家の廊下は音がなくなったようにしんとしていた。  不気味なぐらいに静まり返っている。いつみんなは帰ってくるのだろうか。  ずっと部屋の中に籠り、その時をずっと待っていた。  時間が経つごとに、俺の心臓の鼓動はどんどん早くなっていく。  この待つ時間が嫌だった。  だがその時、玄関が開く音が聞こえた。  俺はそっと階段の下の方に目を向けた。  下から父さんと母さん、そして幼馴染の曽奈柚葉の楽しそうな会話が聞こえる。  と、そこで彼らの会話が聞こえなくなった。  どうしたのだろうか?  あれだけ楽しそうに笑っていたのに、それがピタリと止まってしまった。 「正吾? いるのか?」  父さんの声がした。信じられないぐらいとても心配しているような声だった。  俺はほくそ笑む。  これでいい…。  放送の準備が整うと、俺はライブ配信を開始した。  世界で最大規模を誇る動画投稿サイト【BOOM】。  ゲーム実況を趣味にしていた俺はこれを通して今から俺のライブ配信を見てくれるであろう人達に伝えたいことがあった。  画面が切り替わると、 「こんばんは…ピレーです。最初に皆さんに謝っておかなければなりません。今日は俺からこのライブ配信をご覧になっている人達に届けたいことがあります。いつものゲーム実況ではありません」と画面に向かって笑った。  思いのほかこれを見てくれている人は多かった。  ネット上ではすかさずコメント欄にたくさんの声が上がった。 『お! ピレーがなんかいつもと変わったことをするぞ!』 『何をするんだ?』 『早くしろ~』  俺はまたそれを見てほくそ笑んだ。 「そう…今から俺は父と母…そして幼い頃から好きだった人をこの手で殺してしまおうと思います。なぜならそうするべきだと思ったからです」
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