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「さて、改めて自己紹介としようか。名前と、なぜあんなところに倒れていたのか。教えていただけないだろうか。」 優衣菜は、正直に言っていいものかわからず、とりあえず曖昧に答えることにした。 「私は…なぜあそこにいたのか、わからないのです。目が覚めたら知らないところにいました。」 間違ってはいないが、決して正解ではない。それでも白馬の王子様の同情は得られたようだ。 「それは、記憶がない、ということか?」 「そうかもしれないわね。なぜあそこにいたのか、ここがどこで今が何年の何月何日なのか。それはわからないわ。」 優衣菜は、異世界だということもまだ信じきってはいなかった。異国の知らない少数民族なら、こんな格好でも普通なのかもしれない。そう思ったから。 「ちなみに、名前と年齢は覚えているか?」 ここは絶対にきちんと答えるべき。そう思ったので、 「名前は、星ノ宮 優衣菜(ほしのみや ゆいな)。21歳よ。よければあなたの名前も教えてほしいのだけれど。」 正直に名乗り、そう聞き返すと、白馬の王子様は少し驚いたような顔をしてから、 「そ、そうだな。名前を聞いたのなら私も名乗るべきだな。失礼した。 私の名前はジェイソン リュミエールだ。ホシノミヤは…」 「あ、あの、ごめんなさい。ファーストネームが先ね、うっかりしていたわ。ユイナ ホシノミヤ、です。」 「そうか。それでは、ユイナ。あなたはこの国の出身ではないかもしれないな。」 うっかりしていた。基本ファーストネームが先だということくらい考えてみれば分かるのに。 「そうかもしれませんね。では、この国のことについて教えていただけませんか?」 この国の出身ではない。そう言った。なのでそこから情報が得られると思い、さらに聞いてみることにした。 「そうだな…この国の名前はアイステリア。この大陸最大の国家だ。アイステリア王国は、壮大な土地を持ち、資源にも恵まれている国だ。そして今は王暦5124年。世界暦だと7036年だ。日付は5月6日。どうだ?記憶とあっているか?」 確か優衣菜が車に撥ねられたのは4月27日。日付はあり得なくはない数字だ。ただ、暦がおかしい。今は西暦2023年のはず。世界暦が7036年というのは聞いたことがない。やはり異世界に来てしまったのか… 「そうですね…日付は覚えているものと10日ほど進んでいるけれどそんなもんかしら。」 「何かあったらまた聞いてくれ。それより優衣菜。顔色が悪いぞ。休んだらどうだ?」 優衣菜の中で理解力がキャパオーバーを起こしてしまったようだ。白馬の王子様もとい、ジェイソンの好意に甘えて、休ませてもらうことにした。
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