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息子も姉との生活を思い出していたのかもしれない。
「そう言えば姉ちゃん覚えてる?カブトムシ事件」
「覚えてるよ!エサあげ忘れたら『カブトムシに謝りなさい!』って虫かごの前に正座させられて」
「そうそう」
「じゃぁ、あれ覚えてる?」
それから子供達は覚えてる話しに花が咲き盛り上がっていた。その光景と会話を聴きながら、私は決して良い母親ではなかったなあと…仕事仕事でいつも気が立っていて怒ってばかり。優しい母親でありたかったのに…と考えながら窓の外を見れば、冷えきったガラス窓から見える街頭が風で揺れる気の枝で見え隠れしていた。街灯の光が心なしか滲んで見えて来てしまった時、光輝の声で我に帰った。
光輝が少し身を乗り出して
「ねぇ、母さんてさぁいわゆるバリバリのキャリアウーマンじゃん。うちの会社にもいるんだけど、そういう人ってオンとオフどうやって切り替えてんの?」
私は間髪入れずに
「風圧!」
美理がダハハと笑い
「わかったぁ~っ!でもそれ男の人にはわかんないよ」
「うん、俺わかんない」
美理が説明を始めた
「駅のエスカレーターのアナウンスだよ、スカート履いてる人へのアナウンス!」
「あぁ、あれかぁ」
私は笑いを堪えて
「あれを聞いたら帰って来たモードになるんだよね」
見当違いの返事に戸惑った光輝を無視して、今度は美理が聞いて来た
「あとさぁ、お母さんて泣いた事ある?ドラマで絶対泣かずにいられない場面でも泣かないよね?」
「無い!」
「「何で?」」
「ドライアイだから!」
「「はぁ?」」
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