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目覚ましを止めリビングに行くと光輝がバタバタと支度をしている。
「光輝おはよう、トースト焼くね」
「わりっ!」
キッチンにトースターのジーーっという音だけが鳴っている。
光輝が牛乳を注ぎながら
「明日、姉ちゃんも言うのかな?『長い間お世話になりました』って」
「言わないんじゃない?だって世話してないもん」
光輝は笑ながらコップ手にテーブルに着いた。
パンが焼ける間に焼いたスクランブルエッグとウインナー、その端にちぎったレタスが乗ったお皿をあっという間にたいらげ、世話しなく席を立った。
「行ってきます!あっ、今日は俺も姉ちゃんも意見が一致して、夕飯はもんじゃね!」
慌ただしく出て行く光輝を見送り、美理の部屋のドアをノックした。
「起きてるよ~」
ドアを開けると思ったよりは片付いていた。少しの手伝いをしてから掃除機をかけようとした時にはお昼の時間になっていた。
「お母さん、お昼チャーハン作ろうか?」
「えっ?どうしちゃった?」
今まで美理から何か作ろうか?なんて言葉を聞いた事がない。
「出来たよ、食べよ!」
置かれた炒飯が黄金色に輝いて見えたのは、窓辺にあるダイニングテーブルに射し込む陽射しのせいではない。
見た目は美味しそう……恐る恐るスプーンを口に運んだ。
「美味しいっ!何処で覚えた?」
「お母さんの作るの見てた」
「えっ?」
「だってお母さんが言ったんだよ?私が就職した時『美理、言われた事だけやってたら仕事は覚えられないよ、先輩方の仕事を見て覚えなさい!』って」
「そんな事言ったっけ?」
「うん、言った!だから料理の先輩のお母さんを見て覚えた」
美理は悪戯っぽく笑ながら自分の作ったチャーハンを口にして
「うん!旨い!」
「美理っ!」
「じゃなくて、美味しいでしたぁ」
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