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アベルは気遣いの猫だった。
あまり丈夫ではない瞳子が寝込んでいると、「ニャーン」(おかあさん大丈夫?)と様子を見に来てくれる。
「ダメかも…」と応えると、そっと隣で添い寝をしてくれる。
優しい猫だ。
ところで瞳子の家にはやたらとお化けが出る。
姿を見たことはないが、カチャッという鍵の音、動き回る人の気配なんかがしょっちゅうある。
ある時寝込んでいたら、寝室に人型の気配が入ってきた。
(やだ、怖い!)
瞳子は思わずアベルの手をぎゅっと掴んでしまった。
そしてそのまま金縛りに合った。
アベルは「大丈夫だよ」と言うように、瞳子の手に自分の手を重ねた。
そのぬくもりに、怖い気持ちは薄れ、金縛りが少しずつ解けていくのを感じた。
このお化け屋敷はそろそろお祓いを考えないといけないが、アベルの優しさを感じることができた。
(猫の方がお化けとかそんなのに敏感そうなものだけれど、アベルは反応しなかったな)
しかし強い味方を得たと瞳子は思った。
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