ふたり暮らし

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アベルを家にお迎えして一週間。 夜いつものようにアベルと戯れていると… コッコッコッ (ん?何の音だろ。アベル?) ゴボッ 「わぁ、吐いた‼︎アベル大丈夫⁉︎苦しくない?」 「………」 瞳子は時間外でも診てくれる動物病院を急いで探した。 幸い、病院はすぐに見つかった。がーー 「キャリーがないんです…」 「じゃあ洗濯ネットに入れて連れてきてね。洗濯ネットに入れたらおとなしくなるから」 「わかりました」 洗濯ネットに入れられたアベルは大声で鳴きながら暴れるのだった。 (キャリーだけアベルの体のサイズに合ったものを買おうと思ってたから、まだないんだよねぇ) どうにか動物病院へ辿り着くと、ベテラン医師が待っていた。 「宜しくお願いします。突然吐いたんです。たぶんストレスじゃないかと…」 瞳子はアベルが自分に気を遣いすぎて、ストレスで吐いたと思っていた。 医師は「では細かく検査していきましょうね」と言ってくれた。 「この子の種類は?」 「ラグドールです」 「やっぱりラグドールは大きいねえ。猫を飼った経験は?」 「ありません。初めてで何もわかりません。この子は里親募集のサイトでお迎えしました。10歳です」 「10歳⁉︎これで10歳はないよ。15歳くらいじゃないかな。  上列右の歯がないね」 歯がない⁉︎ 15歳⁉︎ 「ほら」 あっ、歯がない‼︎ 「ウェットフードを食べさせてあげるといいですよ。食欲が落ちたらささみを茹でて食べさせてあげて。 里親募集のサイトでって言ってたけど、お金はかかったの?」 「はい。去勢代として2万円」 「去勢代にそんなにかからないよ。最近は里親詐欺もあるからねー。その保護主、獣医とつるんでるんじゃないの。猫の年齢も若く偽ってたみたいだし」 さ、里親詐欺ー⁉︎ あの保護主さんを疑いたくはないけれど… んー…複雑な気分。 瞳子は混乱した。 「いざお迎えしたら持病があって治療費がかさんで、子猫を買った方が安上がりだったっていうケースも多いですよ」 「私、大人のラグドールがほしかったんです。大人の猫はペットショップにはいませんから」 「そうですか。そう仰るならそれでいいと思いますよ」 「それにこの子すごく良い子で…死ぬまで面倒みます!必要なら介護もします。持病があったら治療費を稼ぐために頑張って働きます!」 「そうですか。アベル君は幸せだねえ」 獣医さんはアベルにそう言ってくれた。 「あ、それから爪がちょっと伸びているみたいで、生活しづらそうなんです」 「どれどれ、爪も見ようね。…ちょっとどころじゃないよこれ。だいぶ伸びてるよ。うーん、命は助けてくれたけれど、ケアまではしてくれなかったんだね」 (保護主さん、大切にお世話してたって言ってたのに…) 「さあ、血液検査の結果が出たかな。ん、問題ないね。体の水分量が少し少ないから、点滴していこうね」 この日は2種類の点滴と注射を1本打ってもらって帰宅した。 時間外料金はサービスしてくれた。 帰りもまた、暴れられて大変だった。 翌日キャリーを買いに行った。 その際キャリーをレジに持って行き、なんとなく「ラグドールなんですけど、入りますよね?」 と訊いてみた。 するとレジのお姉さんは 「こちらSサイズで…主に小型犬用なんです」 と言った。 慌ててMサイズに変えてもらったのは言うまでもない。
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