瞳子

1/4
前へ
/27ページ
次へ

瞳子

「はぁ〜、幸せ」 女は猫カフェにいた。 癒しに飢えていた頃ここの猫カフェを偶然見つけ、ふと入ってみると想像以上の癒し空間であった。 猫カフェの猫はあまり相手をしてくれない事も多いが、そんな事は構わない。 猫達と同じ空間に居られるだけで充分だ。 気づけば女は猫カフェに通い詰めるようになっていた。 女は霧島 瞳子(きりしま とうこ)という。 自宅アトリエで、ジュエリーデザイナー兼彫金師をしている。 28歳、彼氏いない歴4年。 一人暮らし。 寂しさにも慣れてきたところで今度は癒しが欲しくなり、猫カフェの常連客となった。 猫と遊んだりする事はせず、もっぱら眺めているだけだが。 この日もまた仕事の合間に猫カフェに来ていた。 なんとなく今日は猫に近づいてみようと思った。 グレーの猫をそっと撫でると、柔らかな毛並みが大変心地よかった。 (あぁ〜、モフモフ) 気付けば撫ですぎていたらしく、グレーの猫は去ってしまった。 (ストレスになっちゃったかな、悪いことしたな) 瞳子が反省していると、足元に白い猫が擦り寄ってきた。 「可愛いー‼︎撫でてもいい?」 白い猫にお伺いを立ててから撫で始めると、白い猫が瞳子の手を舐めた。 ズキューーン その瞬間、瞳子の心は射抜かれた。 (この子すごく接客が上手…!猫と暮らしたら、毎日こんな想いができるのかなぁ) 猫と…暮らす… 瞳子の頭に今までにはなかった考えが浮かんだ。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加