アクアマリンの軌跡

瞳子

帰宅後、瞳子は仕事の続きもそこそこに、ペットの譲渡サイトを見ていた。
ラグドールが初心者にも飼いやすいとの情報は以前から得ていたので、ラグドールを探す事にした。
(なんてね。ラグドールみたいな高級で人気の種類の猫が簡単に出てるわけな…出てるじゃん!しかもわりと近所の人が里親募集出してるし!掲載期限は…あ、明日まで⁉︎)
居ても立ってもいられず、瞳子は躊躇する事なく保護主さんにDMを送った。

返信はすぐに来た。
猫を連れてうちに来て、飼育環境をチェックしたいとの事。
瞳子は二つ返事でOKした。

(でも大丈夫かなぁ。うち工具類いっぱいあるし、高いのから安いのから宝石もいっぱいあるし…作業部屋に猫を入れなければ、いいか。)

瞳子の自宅アトリエは、玄関を入り左手にジュエリー製作の作業部屋がある。
彫金机の隣にはデザイン机が置かれ、デザイン道具や彫金用の工具が様々ある。
それから、ティータイム用のテーブルとソファが壁際に置かれていた。
右手の部屋は寝室。
正面のドアの向こうがリビングという間取りだ。
(もし猫をお迎えできたら、リビングと寝室を使ってもらおう。
作業部屋は危なくて入れられないものね)

瞳子は何度も、保護主さんが出した里親募集の情報を見返していた。

【大きな甘えん坊のラグドール♂
酷い環境で飼育されていました。
室内にいるのにノミだらけで、食事も最低限でした。元飼い主がネグレクト。
化膿した耳、痩せた体であの環境でよく頑張って生きていました。
甘えん坊でとても可愛い子です。
大切にお世話しております。
幸せを切に願い、良いご縁をいただきたく、掲載いたしました。
あまり他の猫と上手くいかないため、先住ペットがいらっしゃらない、今後もバブ君だけでお世話してくださる里親様希望です。
10歳と老齢ではありますが、まだまだ元気です。
今まで苦労した分、幸せな生活をしてもらいたいと切に願っております。
どうぞよろしくお願いいたします。】

10歳というところに違和感を覚える。
保護主さんとのDMのやり取りの中では、11歳とも12歳とも書かれていたからだ。
なぜ、年齢が統一されていないのだろう。
気にはなるが、そこは気にしても仕方がないように思えた。