ふたり暮らし

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ふたり暮らし

二人暮らしーー正確には一人と一匹暮らしだが とにかく無事一晩を過ごした。 アベルは朝食の時以外またソファの下で香箱座りをしていた。 (まだ慣れていないし、ここが落ち着くのかな) 瞳子はブランケットを用意してあげた。 アベルは少し嬉しそうにその上に座った。 「じゃあアベル、おかあさんお仕事してくるね。何かあったら呼んでね」 瞳子は作業部屋に向かった。 瞳子は新生活にわくわくしていた。 そのわくわくした気持ちを、ラフスケッチに落とし込んでいく。 (はぁ〜、アベル可愛いなぁ。可愛い可愛い可愛い…) アベルの事ばかり考えながら、ラフスケッチを描く手は止まらなかった。 気づけばお昼になっていた。 (あ、アベルのごはんの時間。うぅ、私もおなか空いたよー。お昼にしよ) 瞳子は作業部屋を出た。 アベルは相変わらずソファの下にいる。 「アベル、ごはんですよー。出ておいで」 すると、出てきたアベルは顔を瞳子の方に向け 「ニャー」 と鳴いた。 まるで「食べてもいいの?」と言っているようだった。 これには瞳子も驚いた。 「え⁉︎もちろんだよ。食べて食べてー」 アベルはそれを聞いて食べ始めた。 そして食べ終え 「ニャー」と鳴いた。 「ごちそうさまでした」と言っているようだった。 (アベルは律儀だなぁ) そう思いながら、瞳子も自分の食事の支度を始めるのだった。
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