8、解毒されました

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「紗那」  彼は私の髪をかき上げながら顔を寄せて、私の耳もとでわざとささやくように名前を言った。  もうこれは、卑怯としか言いようがない。  耳に触れる吐息とともに、甘い声で声を吹き込まれたら、脳の奥まで刺激される。  体がぞくぞくする。  瞬く間に女をその気にさせる。  彼はやはり遊び人なのかもしれないと勘ぐってしまう。  たぶん私は真っ赤な顔で彼を見つめているだろう。  アルコールの力じゃなくて、彼の甘美な言動のせいで。 「千秋さん」 「はい」 「あなたのせいです。こんな気持ちになったのは」 「うん」 「責任、とって」  彼はにっこりと笑って静かに答えた。   「もちろん」  彼は私の頭を掴んで唇をふさいだ。  それは強引なようで、意外なくらい優しい感触だったからびっくりした。  けれどそれよりも心地よくて、一気に雪崩のようなキスの嵐に酔いしれた。    せっかく作ってくれた料理が食べられなくなったけど、なんかもうそれどころじゃなかった。
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