9、あの子はクラッシャー系女子

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 会社のロビーに到着すると人の波をかき分けて美玲が飛びついてきた。  彼女は私の肩に手を置き、驚いた顔で訊ねる。 「ちょっと紗那、どういうこと? さっき一緒にいた人って前に話していた謎のイケメンじゃない?」  優斗とのことは報告していたけど、千秋さんのことは話していなかった。 「そうなの。えーっと、どこから話せばいいのか……」 「何か事情があるわけね。じっくり聞きたいわ。今夜久しぶりに飲みに行く?」 「いいよ」  ふわっとかすかに煙草の匂いがした。 「美玲、煙草やめたんじゃなかったの?」 「あー、うん……最近ストレスすごくてさ」 「何かあったの?」 「弟夫婦のゴタゴタに巻き込まれて母親の八つ当たりもすごくて、やってらんないって感じ」  なんだかものすごい既視感だ。 「私も、母親とうまくいかないんだよね。だけど縁が切れなくて」 「あたしも、何度も疎遠にしてやろうかと思った。けど電話が来たらつい出ちゃうのよね。話聞いたって弟のことしか話題にしないのに、イライラしながら聞いてしまう。で、電話切ったあとに煙草吸っちゃうわけ」  美玲ははぁっとため息をついた。 「真面目に働いて生活しているだけなのに、どうしてヤなことばっかりなんだろね」
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