9、あの子はクラッシャー系女子

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 エレベーターに乗り込むと、彼は軽い口調で言った。 「今夜も泊まっていく?」 「は? いやいや、何さらっと彼氏みたいなこと言ってるんですか」 「そうか残念。また誘うよ」 「軽っ……」  エレベーターで10階に辿り着いたら、彼はにこやかに手を振って私を見送ってくれた。  なんだか拍子抜け。 「じゃあ、おやすみなさい」 「おやすみ」  そう言ってエレベーターの扉が閉まった。  なんだろう。急に寂しさが募ってきた。  あの誘いに乗っていたら何か変わっていたのだろうか。 「いや、何バカなこと考えてんの」  もし新しい人と付き合うなら、私の心がきちんとニュートラルになってからだ。  そうでないとまた失敗する。  優斗と同棲しようと思ったきっかけも、毒親の実家から逃れられるという理由だったから。    甘い言葉にすがりつきたくなるけれど、同じことを繰り返さないためにも、まずは自分の足で歩かないと。  だけど、もう少し気持ちが落ち着いたら、食事に行ってもいいかな。  なんて思ったりして、少し楽しみになってきた。  けれど、そんな日は来なかった――。
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