9.5 ~CHIAKI side 。:.゚。+。 ゚+.

1/3
前へ
/305ページ
次へ

9.5 ~CHIAKI side 。:.゚。+。 ゚+.

「うわあ、これはやられたね」  行きつけのバーの店長が、スマホ画面に表示された紗那と乃愛の写真を見て困惑の表情をした。  千秋はカウンターテーブルに座って辛口のカクテルを飲みながら真顔で宙を見つめている。  店長は眉をひそめながら訊ねる。 「誰がやったか、見当ついてる?」 「ああ」  千秋は短く返答した。 「彼女は大丈夫かな? 会社に行きづらいんじゃないかな」  千秋はカタンとグラスをテーブルに置いて、黙ったまま立ち上がる。  そしてそのまま店を出ていこうとした。  千秋の背後から店長が声をかける。 「どうするの?」  訊かれた千秋は宙を睨みつけながらぼそりと言う。 「ひとりずつ(・・・・・)地獄に送ってやる」  店長は額に汗を滲ませながら苦笑した。 「あーあー、千秋怒らせちゃったな。知らねー」  マンションに帰り着いて10階の部屋へ向かう。  インターホンを押したら紗那が出てきた。 「こんばんは、千秋さん。こんな遅くにどうしたんですか?」  紗那は泣いていたのか目を腫らしている。  それを見た千秋は思わず彼女を抱きしめた。 「え? 何、どうかしました? もしかして酔ってるんですか?」 「酔ってない」 「じゃあ、何? いきなりこんな夜中に来て、まさか……」  千秋は顔を離し、紗那の顔をまっすぐ見つめて言う。 「俺の前で強がらなくていい」  すると紗那は目を見開いたまま、ぼろぼろと大粒の涙をこぼした。
/305ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6562人が本棚に入れています
本棚に追加