1、私はただの家政婦ですか

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 美玲はサンドイッチをかじりながらため息まじりに話す。 「結婚したら夫育てをしろって聞くじゃん。あれ、何なんだろうね。夫育てなんて姑がしておけよって思うわ」 「……うん、まあ」  私は今朝作ったお弁当のハンバーグを箸でカットして口に入れる。 「私さ、もし生まれた子どもが男だったら、家事と料理はしっかり仕込んでおくつもりよ!」  やけに強い口調で言うものだから、紗那は怪訝に思い訊ねた。 「美玲、何かあったの?」 「はあ……弟が離婚されそうなのよ」 「え?」  紗那は箸を止めて、周囲に視線を配る。  誰もこちらを見てはいないようだが、シビアな内容であるためひっそりと話す。 「何があったの?」 「義妹が妊娠してるの。もうすぐ生まれるんだけどさ。弟が何もしないから奥さん怒ってね。ただいま実家に出戻り中」 「妊娠中の奥さんを残して?」 「追い出されたのよ。あんたみたいな役立たずはいらないって。まあね、うちの母は弟を溺愛していたから何もできない子になっちゃったのよね」 「でも、それだけが理由なの?」  美玲は食べ終えたサンドイッチの袋を丁寧に畳みながらうーんと唸った。 「奥さんが切迫流産のとき、弟は妊娠は病気じゃないから家事くらいしろって言ったらしくて」 「それ絶対言っちゃダメなやつ!」  美玲は頭を抱えてため息をついた。
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