10、こんなはずじゃなかったのに【優斗目線】

4/13
前へ
/305ページ
次へ
 結局、乃愛はピザをすべて自分で平らげ、優斗はカップラーメンをすすったのだった。  乃愛は背伸びをしたあとソファにごろんと寝転がる。  そして、あろうことか優斗にきゅるんとした目を向けて言った。 「ねえ、優くん。えっちしよ」    優斗は驚愕のあまり固まった。  そして、次第に苛立ちが募ってきた。 (バカなのか? こいつ。こんな目に遭ってそんな気になれるかよ)  優斗が無言で不機嫌をアピールしたら乃愛は「つまんなーい」と言ってスマホをつつき出した。  その様子を見て優斗は表情を歪める。 (くそっ、こいつは早く母さんに教育してもらわないとだめだ)  優斗はすぐに電話をかけて、母にすべてを話した。  すると母はすぐにこちらへ来ると言ったのだ。 (とりあえず母さんになんとかしてもらうか)  優斗はにやりと笑った。  そして1時間ほど経った頃、優斗の母が訪れた。  乃愛を見た母は一瞬真顔だったが、じっくりと上から下まで観察したあと、よそゆきの愛想笑いを浮かべた。 「まあ、あなたが乃愛さんね。はじめまして」  優斗母を見た乃愛はきょとんとした顔になった。  乃愛が挨拶を返さないので、母は表情を引きつらせる。 「おい、俺の母さんだぞ。お前、挨拶しろよ」  優斗が問い詰めると、乃愛は「なんで?」と軽く返した。
/305ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6523人が本棚に入れています
本棚に追加