10、こんなはずじゃなかったのに【優斗目線】

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 それを聞いた優斗は急に慌て出した。 「乃愛、お前その言い方…」 「てゆーか、優くんは家で何するの?」 「は……?」  すっとんきょうな声を上げる優斗の代わりに母が答える。 「優斗は男よ。男の役割は外で仕事をすること。女は家を守ると昔から決まっているでしょう?」  すると乃愛が「やばっ」と声を洩らした。 「優くんママ、頭の中アップデートしたほうがいいですよぉ」 「なっ……」 「だって嫁は仕事して家のこともするのに、男は仕事だけでいいなんて」  乃愛はきゅるんっとした顔で言い放つ。 「優くんただの役立たずじゃーん!」  優斗母は眉を吊り上げ、引くついた顔になった。  それでもどうにか怒りを表に出さないようにしている。 「あなた、息子をバカにしないでちょうだい」 「だってお母さんが女のことバカにしてるんでしょー」 「乃愛さん、年配者にはもっと丁寧な言葉遣いをしなさい。うちの近所は礼儀正しい人たちばかりなの。あなたの態度だと評判が悪くなるわよ。困るのはあなたなのよ?」  優斗母の言葉を聞いた乃愛はますます目をぱっちりさせて訊ねる。 「えー? なんで乃愛が困るんですかぁ?」 「ご近所を歩けなくなるでしょう?」 「別に優くんの実家の近所を歩いたりしないのでご心配なくー」  乃愛はにこっと笑って返した。
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