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「なっ……」
優斗母が拳を握りしめながら今にも声を上げそうになっている。
慌てて優斗があいだに入る。
「乃愛、ちゃんと母さんの話を聞けよ。お前にいろいろ嫁の務めを教えてくれるんだぞ」
すると乃愛はふたたび目をぱっちりさせて首を傾げながら言った。
「どーして乃愛が嫁の務めを教わるの? だって乃愛はまだ結婚しないよ?」
それを聞いた優斗はぽかんと口を開けたまま黙った。
「それにー、なんで乃愛が優くんと結婚することになってるの? 意味わかんないんですけど」
唇を尖らせる乃愛を見て、いつもは可愛いと言っていた優斗はこのときばかりは苛立ちのほうが強かった。
「は? だってお前、紗那を追い出しただろ? お前がうちに来てくれるからじゃないのか?」
「はぁー? ますます意味不明なんですけどー。だって元カノさん追い出したのは乃愛じゃなくて優くんでしょー」
まさかそんな返しをされるとは思わず、優斗は狼狽えだした。
「いやお前、俺が紗那の態度に問題があるって言ったら同情してくれただろ? お前が俺のそばにいてくれるって言ったじゃないか!」
「うん。そばにいるって言ったよ。でも、優くんと結婚するなんて一度も言ってないよ」
優斗は表情が凍りつき、口をぱくぱくさせた。
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