1、私はただの家政婦ですか

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「そういうのが積もり積もって、奥さんがついにキレて……弟が飲み会から酔って帰宅したときに離婚しようって言われたらしいの」 「あー……なるほど」  うちも似たようなことがあったなあと思い出す。  優斗もたまに飲みに行っては相当酔って帰ってくる。  帰宅すると玄関に寝転んだり、靴のままリビングに上がったり、トイレで寝ていたり、そんなことも何度かあった。  紗那が激怒すると優斗はしばらくおとなしくなるが、それもずっとは続かない。  結局また酔って帰っては靴を履いたまま部屋に上がろうとするし、トイレで寝たりする。  もう、諦めていた。 「一応、私は義妹の味方。うちの母が弟大好きだからさ。奥さんに非があるんじゃないかって言うわけよ。そんなの夫婦にしかわからないでしょ。一方の意見だけ聞いてどちらかを悪にするなんてどうかしてるわ」 「そうだね。美玲のお母さんは息子の離婚危機を心配じゃないのかな?」 「ぜーんぜん。せっせとお世話してるわ」 「うわっ……」  どこも似たようなものだなと思う。  母親にとって息子は特別。恋人に似たような気持ちがあると聞くけれど、実は私の兄もそんなふうに育ったのだ。  兄は三十路過ぎても結婚せず、実家に居座ってすべての世話を母がしている。
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