10、こんなはずじゃなかったのに【優斗目線】

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 乃愛が出ていったあと、嵐が過ぎ去ったようにしんと静寂が訪れた。  しばらく沈黙していた母が優斗に静かに告げる。 「優斗、紗那さんと連絡を取りなさい」 「え? 何言って……だって紗那は……」 「3年も同棲しておきながら、そう簡単に別れられると思っているの?」 「いや、それは……」 「どうにかして紗那さんを連れ戻すのよ。山内家の嫁は紗那さんしか務まらないでしょ?」  恐ろしいほど真剣な顔で母に言われて、優斗は額に冷や汗をかく。  自分が出ていけと言った手前、こっちから戻ってくれと言うのはみっともない気がする。 「もうご近所にも優斗が結婚するってみんなに言って回ったのよ! 今さら結婚しないなんて恥ずかしくて言えないでしょ!」  母が鬼気迫る顔で訴えるので、優斗は俯いて黙り込んだ。 「いい? 絶対に紗那さんを連れ戻しなさい! 結婚式は予定通りしますからね!」  母はそう言うと、優斗をじろりと睨みつけてから、そそくさと出ていってしまった。  残された優斗は苛立ちが爆発し、テーブルに置いてあるカップを壁に投げつけた。 「くそっ!!!」  カップは取っ手と飲み口が割れて床に虚しく転がった。
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