10、こんなはずじゃなかったのに【優斗目線】

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 優斗は苦悩のあまり「あああっ!」と感情的に叫び、拳でテーブルをバンバン叩いた。  テーブルに叩きつけた拳が赤く腫れ上がる。  優斗はぶつぶつ文句を呟きながらこうなった原因を考える。  紗那の顔を思い出し、ぎりっと歯噛みする。  優斗は紗那と一緒に食事をしたダイニングテーブルを見つめてぼそりと呟く。 「くそっ、ぜんぶ紗那のせいだ!」  優斗は紗那との3年の同棲生活を思い出す。  紗那は面倒見がよく、世話好きで、なんでも言うことを聞いてくれた。  しかし、同棲当初は穏やかだった紗那はだんだん口うるさくなっていった。  夜の営みも紗那は疲れていると拒否することがあった。  仕事から疲れて帰ったら、家は安らぎのある場所でないとおかしい。  それなのに、紗那は癒してくれなかった。  だから、乃愛と関係を持ったのだ。  「どう考えても俺は何も悪くないよな?」  優斗はスマホを手に取り、連絡先から紗那を表示させる。  紗那が出ていったあと、何度か【後悔するなよ】とメッセージをしたが、既読がついたまま返事はなかった。 (そういえば、紗那は今、会社で孤立していたはずだ)  優斗はにやりと不気味な笑みを浮かべる。 (俺が、なぐさめてやろう)
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