11、元カレがロミオになった

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「え? 何どゆこと?」 「あの人、元カレなんだって」 「うわ……きっつ」  周囲のひそひそ声に優斗が慌て出した。  まさか、千秋さんはわざと人の多いところで……? 「あのう、千秋さん……さすがに騒ぎになるとまずいので」 「どうして? 俺と君は何も悪いことはしていないのだから堂々としていればいいよ」  まったく恥ずかしげもなく、むしろ冷静な千秋さんに私まで圧倒された。  さ、さすがアメリカンというか、些細なことで動じないところはすごい……って、感心している場合じゃない。 「あんまり目立ちたくないので行きましょう」  そう言うと、千秋さんは私と手をつないでにっこり笑った。 「ああ、そうしよう。こうして衆人環視のもとに恋人宣言したのだから、今後は一緒に出勤しようね」 「は、はぁ……」  衆人環視って日本語が使いたかったんだな、ってそんなどうでもいいことが頭に浮かんだ。  私は千秋さんに手をつながれたまま会社に向かって歩き、背後で優斗がぶつぶつ声を上げているのがうっすら聞こえた。 「裏切り者。慰謝料払えよ。お前浮気してたんだろ。何とか言えよ」  もう、聞こえないふりをした。  そしてこのあと、まあ予想していた通りのことが起こる。
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