12、決着つけましょう

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 しばらく千秋さんをじっと見つめていると、テーブルの向こう側に座る川喜多さんがこほんっと咳払いをした。 「ええー……では、僕はこれで失礼します」  川喜多さんが席を立つと、私も急いで立ち上がった。  千秋さんと玄関先まで彼を見送る。  川喜多さんが帰り際に私へ声をかけてきた。 「紗那さん、おかしいと思うことはおかしいと主張してよいのです。自分さえ我慢すれば丸く収まる。そう考える人は意外と多くいます。けれど、それでは自分も周りも幸せにはなれません。他人をいい気分にさせても自分が疲弊していては意味がありません。自分の心を守るために戦うべきときもあります」  彼はすらすらと話したあと、少し恥ずかしそうに俯いた。 「今のは僕の個人的なことなので聞き流していただいて結構です。それでは失礼します」  彼はぺこりとお辞儀をして静かに帰っていった。  そのあと、千秋さんは私に川喜多さんの話を少ししてくれた。 「彼は俺の従姉の今の夫なんだよ」 「え? あの……私にこのマンションの部屋を貸してくれて私と似た境遇で離婚して今は誠実な人と再婚された従姉の方ですか?」 「よく覚えているな」  千秋さんはちらりと私を横目で見て言った。 「じゃあ、そのとき従姉さんを助けてくれたのが川喜多さんだったんですね」 「そう。彼のことは信頼している。だから君のことをお願いしたんだ」  それを聞いて、ずいぶん私の不安が解消された。
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