13、これで本当にさようなら

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 日曜日の午後、私は川喜多さんと一緒に山内家の前に来ていた。  川喜多さんは以前会ったときと違ってきちんとスーツを着ている。つまり、これは彼の仕事なのだ。 「いいですか? 紗那さん。何が起こっても動じないでください。事前に話した通りに進めていきます」 「はい、大丈夫です。よろしくお願いします」  私は彼にぺこりとお辞儀をしてから改めて山内家を見つめた。実はもう何度か来ている場所だけど慣れない。  優斗母はあんな感じだけど、彼の父もなかなかの曲者でプライドが高く、超がつくほどの亭主関白だ。食事のときは必ず『男は座って待て。女は最後まで配膳しろ』の姿勢を崩さない。  私が家に来たときも決して座らせてくれず、ひたすらお茶の準備や食事の支度を手伝わされた。  私が同居に踏み切れなかった一番の理由はこれだ。優斗母はそれが当たり前だと思っているし、父も他人に気遣いなどしない。  私自身も実家がアレのせいか、この家の状況にそれほど違和感を抱くことなく今までやってきた。  けれど、これは無理だと今ならわかる。
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