13、これで本当にさようなら

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 和室に通された私と川喜多さんの目の前に、優斗父と優斗母、そのあいだに優斗本人が座っている。父は真顔、母は激怒した顔をして、優斗本人は不機嫌そうな顔だ。  真っ先に優斗母が口を開いた。 「紗那さん、これはどういうことなの? 結婚の話し合いをするはずじゃなかったの? 弁護士を連れてくるなんてどういうつもり?」  相変わらず話が通じない。そっちが弁護士に相談しているからうちに来いと言い出したのに。  などと反論しても無意味なので、私は川喜多さんにお任せすることにした。  川喜多さんは丁寧に説明を始める。 「石巻紗那さんは山内優斗くんとの婚約を解消し、山内家との関わりをきっちり終わらせることを希望しています。そちらがそれを拒否されるのでこの場で話し合いをして解決を図りたいと考えています」 「私たち家族の問題に他人が口を出さないでちょうだい」 「僕は石巻さんからきちんと依頼を受けていますので他人が勝手に口を出しているわけではありません」  すらすらと冷静に返す川喜多さんに、優斗母は一瞬反応に困り、なぜか私に目を向けてにやりと笑った。 「紗那さん、あなたあまりにもおふざけが過ぎるわよ。ただの喧嘩なのにこんなに大袈裟にするなんて、そこまでして優斗の気を引きたいの? わかったわ。あなた、優斗の愛情を確かめたいんでしょ? あたしにもそんな頃があったわ」  私はただ無の感情で彼女の発言を右から左に聞き流した。
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