13、これで本当にさようなら

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 以前から優斗は自己中だと思っていたけど、ここまで自分に都合のいい解釈しかできないなんて、本当に頭がおかしくなってしまったのだろうか。  それとも私が彼をそうしてしまったのだろうか。  優斗は腕組みしたまま語り出す。 「だいたい、俺は被害者だ。紗那は女としての役割を果たしていなかった。俺はただ紗那を叱っていただけなんだ。なあ、父さん? 父さんもそう思うだろ?」  優斗がとなりに顔を向けると、無言を貫いていた父が険しい表情で低い声を発した。 「優斗から話は聞いたが、私は紗那さんに落ち度があると思いますね。息子の言う通り、女には女の役割がある。我が家はそのように厳しく育ててきたんだ。うちの嫁は多少うるさいが男を立てるすべを身につけている。最近の若い娘は平等がどうだのと偉そうに語るが、子をもうけたら働けないだろう。身の程を知らない奴ばかりで困る」  優斗は満足げに笑いながら私と川喜多さんを交互に見つめた。  思った通り、父も話の通じない人だった。この人はこれでも会社の部長らしいから、きっと社内でとんでもないパワハラをおこなっているのだろうことは想像に難くない。
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