13、これで本当にさようなら

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 川喜多さんに反論できないのか、優斗母は今度は話を元に戻した。 「だいたい、その女とは別れさせたのよ。優斗は心を入れ替えて紗那さんとやり直すと言っているのにその好意を踏みにじるなんて、紗那さんあなたは人として最低だわ!」  一体どう突っ込めばいいのだろう。  さっき優斗は自分は悪くないと言い、優斗母は優斗が反省していると言い、この親子が今までどうやって周囲と関係を築いてきたのか疑問すぎる。 「どう思われても結構です。私は優斗くんと別れます」 「そんな身勝手なことは許されないわよ!」  優斗母が拳を握りしめてテーブルをダンダン叩く。  私が少し怯んでいると、川喜多さんが変わらず冷静に言った。 「お母さん、不貞関係にあった女性と別れても過去をなかったことにはできません。よって優斗くんの有責を帳消しにすることはできません」 「有責有責ってうるさいわよ! 優斗は何も悪くないの! 紗那さんが優斗の世話を怠ったから悪いのよ。これはすべて紗那さんに原因があるの」  私を指差しながら声を荒らげる彼女に向かって、私は何とか平静を保って告げる。 「私は便利な家政婦ではありません。勘違いしないでください」 「なんて生意気な子なの! 謝りなさい! あなたのせいで優斗は夜も眠れないのよ! 責任取りなさいよ!」  めちゃくちゃなことを言いながら激昂する優斗母に、川喜多さんが冷静に返す。 「感情論で押し通しても無駄ですよ。こちらは事実を証拠にして然るべき対応をおこなうだけですので」  優斗母は目を見開いて硬直した。
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