13、これで本当にさようなら

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 こちらが何をどう言っても優斗と両親には通じない。  しかし、彼らもそうだった。何をどう言っても川喜多さんには響かない。  ただ感情的な発言をする彼らに対し、常識に照らして発言する川喜多さん。  適うわけがないと判断したのか、優斗父が静かに言った。 「もういい。わかった」  優斗父の言葉に、他のふたりが呆気にとられて彼を見つめる。 「優斗、彼女と別れろ。これ以上お前は面倒なことを起こすな」 「なっ……俺がどうして」 「世間体が悪いだろう。別れれば済む話なら問題ない。また他の娘を探せばいいだけだ」  優斗父はまるで使用人を探すかのように女を見ている。それが無性に腹が立つ。けれど、彼はもっと苛立つことをわざわざ私に向かって言い放った。 「よく見ろ。こんな娘のどこがいいんだ? 気が強い、男を立てることもしない、女のくせに仕事しか能のない娘と結婚しても山内家を盛り立てていくことはできないだろう?」  逆に訊きたい。あなたの家は盛り立てていくほどのすごいおうちなのですか?  財閥ですか? 会社経営者ですか?  あなた会社員ですよね??? 「今なら失敗しなくて済むぞ」  さすがにカチンとして思わず反論した。 「お言葉を返すようですが、そのような考え方をする家の人間と関わりたいと思う人がいるでしょうか? 私はもう二度とごめんです」  今まで優斗父の顔を立てて発言を控えてきたけど、もう言いたいことは全部ぶちまけることにした。
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